株式投資で長期的なリターンを得る上で大切なのは、市場に居続けることです。チャールズ・エリス氏の名著「敗者のゲーム」原著第8版では、1980年1月1日から2016年4月1日までの約36年間における株式投資のリターンについて、非常に印象的なデータが示されています。全期間を通じて株式市場に投資し続けた場合、年平均リターンは11.4%でした。かなり優秀な数字です。しかし、この期間のうち株価上昇率が高かった上位10日を逃しただけで、年平均リターンは9.2%まで低下しています。
たった10日(0.1%)で大きな差
1980年1月1日から2016年4月1日までの約36年間のうち、上昇ベスト10日は期間全体の0.1%にも満たないごくわずかな日数です。それを逃しただけで、年平均リターンが2.2ポイントも低下します。人間の感覚では「たった10日」ですが、資産形成ではまったく笑えない決定的な大きな差になります。
20日、30日逃すとさらに厳しい
さらに厳しいのは、上昇率上位20日、30日を逃した場合です。「敗者のゲーム」によると、同じ期間で上昇率上位20日を逃すと年平均リターンは7.7%まで低下します。上位30日を逃すと、年平均リターンは6.4%まで下がります。全期間保有していた場合の11.4%と比べると、上位30日を逃した場合は4割以上も低い水準です。約36年のうち、たった30日を取り逃すだけで、長期リターンがここまで削られてしまいます。投資のリターンは、毎日均等に少しずつ積み上がっているだけではありません。長い期間の中で、ほんの一部の強烈な上昇日が全体のリターンを大きく支えている側面があります。その上昇日がいつ来るかは、事前には分かりません。分かるなら誰も苦労しません。みんな大金持ちになって、金融機関の広告ももしかするとこの世から消えるかもしれません(仮にそんな状況になったら金融機関は別のビジネスを始め、バンバン広告を出しそうな気がしますが笑)。いずれにせよ、そんな世界は残念ながら来ていませんし、将来も恐らく来ません。
暴落直後こそ危ない

上昇率上位の日の多くは、株価が大きく下がった後の反発局面に現れやすいとされています。これが非常に厄介です。暴落時に怖くなって売り、「落ち着いたら買い戻そう」と考えるのは自然な感情です。資産が大きく減るのを見て、平然としていられる人ばかりではありません。しかし、市場は投資家の心が落ち着くまで待ってくれません。最も怖い時期に、最も大きな反発が来ることがあります。仮に暴落前にうまく売れたとしても、次は買い戻すタイミングを当てる必要があります。売るタイミングと買うタイミングを両方当てなければなりません。しかも一度だけでなく、長期にわたり繰り返し成功させる必要があります。これは極めて困難です。プロの投資家でも継続的に成功させるのは難しいでしょう。個人投資家が気分やニュースを頼りにできると思うのは、なかなか危ういです。
配分で市場に居続ける
だからこそ、個人投資家が考えるべきなのは、暴落を完璧に避ける方法ではなく、暴落が来ても市場に居続けられる資産配分です。リスク資産を持ちすぎれば、急落時に耐えられず売ってしまうかもしれません。反対に、リスク資産を持たなさすぎれば、長期的な株式市場の成長を十分に取り込めません。大切なのは、自分のリスク許容度に合った比率で、リスク資産と無リスク資産を持つことです。リスク資産は「長期、分散、低コスト」を満たす時価総額加重平均型の全世界株式インデックスファンドを中心に考えれば分かりやすいです。無リスク資産は個人向け国債変動10年やMRF、普通預貯金などです。株価が上がっても浮かれず、下がっても投げ売りせず、決めた配分を守り続ける。地味ですが、再現性があるのはこの方法だと思います。
逃げるより続ける
1980年1月1日から2016年4月1日までの約36年間で、全期間保有なら年平均11.4%。上昇率上位10日を逃すと9.2%。上位20日を逃すと7.7%。上位30日を逃すと6.4%。この数字を見ると、市場から降りることの危うさがよく分かります。株価が大きく下がった時に一度逃げたくなる気持ちは分かります。しかし、上昇ベスト日を取り逃すリスクを考えれば、安易な売却は長期リターンを大きく損なう可能性があります。未来は読めません。だからこそ、読まなくても続けられる形にしておくことが大切です。投資で重要なのは、上げ下げを当てることではなく、耐えられる配分で市場に居続けることです。上昇率上位0.1%未満の日を逃さないためには、普段から市場にいるしかありません。退屈で、地味で、つまらない。ですが、長期投資ではそのつまらなさこそが最大の武器になると思います。

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