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自民税調会長、金融所得課税強化に意欲

金融所得税率一律税率 株式投資の心構え
金融所得税率の一律引き上げは富裕層より中間層の負担が大きくなる。見えにくいが、申告なし分の薄い棒グラフは中間層で高くなっている(2021年12月2日付日経朝刊より)
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 こんにちは、自民党の宮沢洋一税制調査会長(税調会長)は金融所得課税の強化に関し、市場の動向を勘案しながら年内に与党の税制改正議論の中で検討する考えを示しました。17日、記者団とのインタビューで明らかにし、米経済通信社ブルームバーグなど複数のメディアが報じました。ブルームバーグの報道によると、宮沢氏は「格差が広がる方向が間違いなくある」と述べた上で、「いわゆる1億円の壁についてきっちり議論したい」と語りました。1億円の壁は合計所得が1億円以下の場合は所得が多ければ多いほど所得税の負担率が高い一方、金融所得の割合が多いという1億円を超えるあたりから税率負担が低下に転じるとする財務省の試算によるものです。金融所得課税強化は極めて格差是正につながりにくいです。それどころか、手段によっては逆に格差を拡大させるだけです。さらに「1億円の壁」は不十分なデータを基に、財務省が拡大解釈して政治家や報道関係者に金融所得課税強化の根拠として吹聴して回っているとみられる話です。

金融庁のNISA拡充案を扱った当ブログの記事です

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根拠が怪しい「1億円の壁」

1億円の壁
巷に出回っている国税庁の申告所得税標本調査(1億円の壁)のグラフ。639万人にすぎない申告納税者のみのデータで作られており、納税者全体のデータを全く反映していない(2021年12月2日付日経新聞朝刊より)

 「1億円の壁」は約639万人しかいない申告納税者のみの申告所得税標本調査に基づき試算され、数千万人いる源泉徴収だけで確定申告をしていない会社員ら無申告納税者分を全く反映していません。あまりにも不十分なデータで、金融所得課税強化の根拠として極めて疑わしいです。「1億円の壁」を巡る日経新聞の過去の報道では、日本証券業協会の森田敏夫会長は「このデータ(引用者注:申告所得税標本調査)をベースにして話をするのはいかがなものかと思う」と指摘しています。

東京新聞のNISA拡充案を巡る記事に反論した当ブログの記事です

分離課税で一律引き上げは愚策の極み

金融所得税率一律税率
金融所得税率の一律引き上げは富裕層より中間層の負担が大きくなる。見えにくいが、申告なし分の薄い棒グラフは中間層で高くなっている(2021年12月2日付日経朝刊より)

 金融所得課税強化の中でも分離課税のまま一律課税強化するのは愚策の極みです。中間所得層以下により多く課税され、格差は一層拡大します。断固として反対します。過去の日経新聞の報道によると、大和総研が納税者全体のケースを試算しており、富裕層よりも中間層の負担が大きくなります。金融所得課税強化が格差是正につながらない結果を示しています。例えば20%の税率を25%に引き上げた場合、約4,600億円の税収増になります。所得1億円以上の富裕層が負担するのは約1,800億円と1億円以下の層の負担約2,800億円よりも小さくなります。

首相の「NISA恒久化必須」発言は参考

金融所得課税、市場動向も勘案し年末に向けて検討-宮沢自民税調会長
自民党の宮沢洋一税制調査会長は、金融所得課税の見直しに関し、市場の動向も勘案しながら年末に向けて与党の税制改正議論の中で検討する考えを示した。17日、記者団とのインタビューで明らかにした。

 ブルームバーグの報道によると、宮沢氏は岸田首相がニューヨーク証券取引所の講演で「NISAは恒久化が必須」と発言について「決して軽くないということは分かっているが、最終的に税制を決めるのは与党の税調」と述べました。首相のNISA恒久化発言を参考に検討する方針を示しています。ブルームバーグの報道から受ける印象として宮沢氏はNISAの恒久化を本音では賛成していないのではないかと感じます。首相が日本最大の同盟国米国の公の場で発言された政策である以上、無視できないから仕方なく検討するかといった印象を受けます。金融所得課税強化ばかりに積極的で、NISA制度や非課税保有期間の恒久化には熱意を感じません。中間層以下の長期の資産形成と格差是正にはNISA制度や非課税保有期間の恒久化は必須です。加えて長期の資産形成に適した投資信託にのみ投資ができるつみたてNISAに一本化して、年間投資上限額と非課税保有額の引き上げも必要です。与党税調はぜひ、NISA拡充の実現をお願いいたします。

政府税調でNISA拡充の議論開始を扱った当ブログの記事です

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