こんにちは、国内リベラル系最大手で日本の知識層や役人、教職員に好まれる傾向があるともされている朝日新聞の12日付1面と2面に「新NISA顕著な海外志向」(1面トップ)、「個人マネー流出悩む各国」(2面トップ、1ページ丸々展開)の大見出しが立っていました。朝日新聞の調査報道によると、1面では2024年1月~11月までに大手証券10社(ネット大手5社、対面大手5社)で少額投資非課税制度(NISA)で購入された投資信託や株式は計約11.8兆円で、そのうち米国株式や全世界株式で運用される投資信託の上位5銘柄の割合が計約4兆円、全体の33%を占めているといいます。2面では、証券10社を対象とした日本証券業協会(日証協)の調査で、同期間に少額投資非課税制度(NISA)口座経由で投資信託や株式を購入した額は前年同期比で3.7倍でした。買付額のうち59%は海外の株式で運用する商品を中心とした投資信託で、日本株式は38%でした。言外に外国株式ばかりが人気で、日本株式が買われないのは問題だと言いたげなようにも感じてしまいましたが、世界の株式時価総額の95%程度は外国株式で、日本株式は5%程度です。それに比べて日証協の調査で日本株式が38%も買われているのは時価総額に比べて十分に「自国バイアス」マシマシで買われ過ぎと言って何ら過言ではないと強く思います。「長期分散低コスト」といったリスク資産運用の大原則から、時価総額加重平均型の全世界株式インデックスファンドやそれに類する指数に連動する外国株式系のインデックスファンドが買われるのは何ら不自然ではなく、海外志向に一体何が問題があるのかと感じます。
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「自国株式優遇枠」英は断念、韓国は実現不透明
詳しい記事の内容は該当日付の朝刊や14日以降に経済面で始まる予定の連載をご覧ください。一応有料会員限定記事のリンクも付します。朝日新聞の報道では、確かに「金融機関の変更時の手続きが煩雑」といった声が紹介されており、この点は私も課題だと思います。「NISAの制度設計が政治や業界の論理で決められ消費者にとって分かりにくい」という識者の声もごもっともです。旧NISAの経緯や複雑な2階建て制度、NISAで金融業界が必死のパッチのロビー活動で強引にねじこんで来た「成長投資枠」にこの手の論理が透けて見えます。別の見方をすれば、金融庁は政治や業界の声を聞きつつ、国民を第一に考えたNISA制度にうまく作り上げたと称賛の声を送りたいです。日本のNISAをモデルとした英国個人貯蓄制度(ISA)や韓国版ISAの現状や動きは興味深く読めました。しかし、英国ISAで一度英国株式優遇枠を上乗せしようとしたり、韓国版ISAで韓国株式限定枠の議論が進んでいたりするものの、いずれも導入できそうもない苦悩を紹介している点に、うがった見方かもしれませんが、NISAに日本株式限定枠を検討してはいかがと言いたげで、今後の連載で展開するのではないかと見えてしまいました。朝日新聞の報道通り、英国の総選挙で与党が大敗し、新政権がISAの英国株式優遇案を廃案にしています。英国の金融関係者は「どちらの政権でも廃案になっていた。海外に投資するのは(成長が期待でき)より魅力的だからだ」と指摘しています。廃案は極めて合理的かつ正しい政治判断です。韓国でも、韓国版ISAでの韓国株式限定枠の実現は不透明です。
NISAに「日本株式限定枠」は不合理かつ邪道の極み
日本でも旧NISAから現行のNISAに刷新する国会議論で一部から日本株式限定枠の導入案が出ましたが、金融庁は国民の長期の資産形成の観点から「無理、邪道」と切り捨てています。「長期分散低コスト」の基本原則である世界の時価総額通りに株式を低コストで保有する原理原則から、日本株式限定枠が真っ向から反しているのは火を見るよりも明らかです。一部の金融インフルエンサーや金融有識者、個人投資家から日本株式限定枠導入の声がくすぶっていますが、一切の論理的根拠がないので無視していい戯言です。外国株式を買われると国内の経済が悪くなるなんていうのは薄く浅く一面的にしか物事を見ていないこじつけです。外国株式人気で円安が進行しているなんていう陰謀論は、専門家が具体的な数字をもって「極めて疑わしい」と結論付けています。外国株式に投資して資産を増やし、国内で消費活動をすれば十分に国内経済に好影響を及ぼすのは小学生でも分かります。日本企業が自社株式の魅力を高めようと努力をする動きも出てきています。そもそも、NISAは国民の長期資産形成のための制度で、日本株式をぬるま湯や護送船団方式、鎖国税制で救うための制度では決してありません。個人投資家はともかく、金融インフルエンサーや金融有識者による日本株式限定枠導入の意見は、正直言うと金融知識と見識、専門家としての良心を強く疑います。専門家として「恥を知れ」と言われても仕方ないと思います。
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