こんにちは、日本株式などのアクティブファンドで人気を集める「ひふみ」シリーズの創業者でカリスマファンドマネジャーとして知られる藤野英人氏がマネーポストWEBのインタビューで、eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)は米国偏重で時価総額の大きい米巨大テック企業7社に極端にベットしている商品だと主張しました。その上で「独自に運用するアクティブ投資」に目を向けてほしいと訴えました。自社のアクティブファンドを少額投資非課税制度(NISA)で売り込みたいポジショントークである可能性が極めて高い話に過ぎないと思います。オルカンは藤野氏が言及している通り、その時々の世界の時価総額(市場平均=世界中の投資家の意思の総和)通りに投資する投資信託です。それ以上でもそれ以下でもありません。オルカンの現在の組み入れ比率が米国偏重で米巨大テック7社に極端にベットしているかどうかは分かりませんので、世界の市場平均を受け入れていくだけです。仮に藤野氏の主張通りに極端にベットしている状況だったら、いずれ組み入れ比率が下がる形で修正されると思います。

アクティブファンドの惨憺たる勝率

詳しい記事の内容はリード文下のリンクからご覧ください。藤野氏がオルカンの保有者に向けて海外に分散投資する重要なプロセスを歩んでいるところで、解約しないで保有や積み立てを続けてほしいという点は争いません。大筋で同意しています。しかし、独自に運用する「アクティブ運用」に目を向けてほしいというのは、藤野氏の願望込みのセールストークと判断しています。アクティブ運用のインデックス運用への悲惨な勝率は様々な研究や株式投資の名著、専門家のコラムなどで幾度となく紹介されています。日経編集委員で「日経の良心」として広く知られている田村正之氏のコラムで紹介されているデータを元に一例を示します。日経電子版のリンクも付します(有料会員限定記事)。田村氏によると、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社の調べで、2022年までの10年間で各国の株価指数を上回ったアクティブ型の比率は米国9%、欧州10%、日本18%、インド32%、ブラジル11%となっているとしています。インドや日本は比較的大健闘していますが、大半の国では例にもれず惨敗です。まさに「33-4」です(笑)インデックス型のコスト(運用管理費)が年0.1%程度が目立つのに対し、アクティブ型は平均で1%台半ばと10数倍の差があるのを大きな要因であると田村氏は指摘しています。さらに、過去10年間で指数に勝ったアクティブファンドが次の10年間では大半が指数に劣後している点もイボットソン・アソシエイツ・ジャパンの調査結果を引用して示し、好成績のアクティブファンドを事前に予想するのは困難であると付け加えています。
楽天証券広告
SBI証券広告
ひふみ投信の方が極端に偏っている




藤野氏はオルカンは米国株式と米巨大テック7社に偏っていると主張していましたが、藤野氏が創業したレオス・キャピタルワークスの旗艦ファンド「ひふみ投信」の方がよほど偏っています。オルカンの最新の月次レポートによると、米国株式の比率は63.9%です。以下日本4.8%、英国3.2%、カナダ2.6%、フランス2.4%と続きます。日本を除く先進国株式が85.1%、新興国株式が10.1%、国内株式が4.8%となっています。これに対し、ひふみ投信は国内株式92.8%、海外株式4.6%、現金等2.6%となっています。国別比率でいえば、ひふみ投信の方が明らかに極端に偏っています。世界の時価総額の5%に満たない国に90%超も超集中投資しています。小学生でも分かるレベルでです。なお、組み入れ上位銘柄は上の【画像】の通りです。オルカンも、ひふみ投信の上位銘柄が占める割合はそこまで極端には違いがありません。
しなやかでたくましい
藤野氏の発言に対し反論しましたが、藤野氏が手掛けるアクティブファンドは中身がインデックスファンドでコストだけがバカ高い「なんちゃってアクティブ」では決してなく、明確な運用哲学があるとい思います。時間がある時にひふみ投信の月次レポートや運用報告書を読むと、なかなか興味深くて勉強になります。私は投資対象として検討すらしたことはありませんが、藤野氏の運用哲学に賛同している人は少なくありません。低コストインデックスファンドとは到底比較対象になりませんが、日本のアクティブファンドの中ではコストは比較的低い方です。トランプ発言を契機に下落傾向に転じた株式市場になって、藤野氏が精力的にセールストークを展開する姿に、儲けようとする人間や企業の欲求はしなやかでたくましく、資本主義は全然大丈夫だとも感じました。皮肉でもなんでもなく、藤野氏や明確な運用哲学を持つアクティブファンドのファンドマネジャーには心より奮闘していただきたく思っています。
コメント