「若い世代は年金が思うようにもらえない」「将来は大幅に減る」といった話が、近年はまことしやかに語られています。不安を煽る識者や政治家、報道を目にすることも少なくありません。確かに過度な楽観は禁物です。しかし、日経編集委員で「日経の良心」として知られる田村正之氏の記事は、こうした悲観論の前提となっている会社員と専業主婦世帯のモデル年金の考え方そのものが、現代の主流である共働き家庭とは大きく乖離（かいり）している点を指摘しています。むしろ若い世代の方が年金の総受給額が増える可能性すら示されており、今回の記事に全面的に賛同します。多くの人にとって参考になる内容だと感じました。
過度な年金不安を解きほぐす
詳しい内容は日経電子版をご覧下さい（該当記事は有料）。記事によると、田村氏は一般的に語られる「夫が会社員・妻が専業主婦」というモデル年金がすでに現実の世帯構造と合致していない点を指摘しています。共働きは片働き世帯の2.6倍に達し、女性自身が厚生年金に長く加入するケースが増えていると説明します。厚労省推計によれば、女性の厚生年金加入期間は現在65歳で17年、2024年時点の50歳で23年、30歳では30年へと伸びる見通しです。男性も女性ほどではないものの加入期間が増加しています。物価で割り戻した実質年金額も、現在の65歳世代に比べて30歳で9％、20歳で16％増えるとされ、女性に限れば30％増の見通しです。低年金層の割合が70％から30％へ縮小する試算も示されています。受給開始後のマクロ経済スライドによる調整を含めた総受給額にも言及しており、現在の65歳が約9,740万円、35歳世代は1億820万円と、将来世代の方が多くなると説明しています。田村氏の記事は、年金を語る際に本来重視すべき「物価上昇を加味した実質額」という視点から論じており、年金不安が過度に膨らむ背景を丁寧に解きほぐしている印象です。
高手数料金融商品から身を守る「処方箋」
厚生年金加入期間の伸びが将来の受給額に与える影響を踏まえれば、若い世代ほど年金が増えるという田村氏の指摘はきわめて合理的であり、数字もそれを裏付けているといえます。旧来の前提に基づいたモデル年金から派生した過度な不安や悲観論、不安につけ込んだ高手数料の投資商品や過剰な保険契約から身を守る上でも、この記事は良い「処方箋」になるでしょう。もちろん、年金財政が盤石であるとは言えず、少子化の進行を踏まえた制度改革は不可避です。しかし、「どうせもらえない」といった誤った前提による悲観論や未納行為は将来の自分を追い詰めるだけであり、避けるべきだと断言できます。正しく理解し、正しく心配し、着実に制度へ参加することが老後の安定につながるといえるでしょう。ひとこと解説でファイナンシャルプランナー（CFP）・社会保険労務士の井戸美枝氏も指摘していますが、長生きリスクに備えて公的年金の繰り下げ受給や個人型確定拠出年金（iDeCo）での自分年金づくりも有力な選択肢です。
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