こんにちは、25日に夜に開かれた三菱UFJ国際投信(三菱AM)の「eMAXIS ブロガーミーティング」にオンラインで参加しました。経済評論家の山崎元氏、投資助言・コンサルティング会社CIOの小松原宰明氏、三菱AM常務の代田秀雄氏が2024年から導入が予定されている新少額投資非課税制度(新NISA)の活用方法や資産配分、運用の基本方針について話し合いました。基本的な考え方を確認するいい機会だったとともに、金融業界に一切の忖度(そんたく)せずに様々な角度で正論を述べる山崎氏の「山元節」ここに健在でした(笑)
危険な誤解「つみたてNISA600万円、成長投資枠1,200万円」
代田氏が制度恒久化、非課税期間無期限化、年間投資上限額360万円、生涯投資上限額1,800万円などと新NISA制度の特徴を紹介。よくある誤解として「生涯投資上限額のうち、つみたてNISA上限600万円、成長投資枠上限1,200万円という誤解がある。一部のメディアさえも誤って報道している」と指摘した上で「あくまで成長投資枠が最大1,200万円の意味で、つみたてNISAだけで1,800万円全て埋めてOK」と説明しました。この誤った認識に対し、実は筆者は危惧しています。つみたてNISAは従来同様に金融庁が長期の資産形成に適した投資信託だけが投資対象で、ほとんどはインデックス型投資信託です。低コストの商品も多くあります。一方、成長投資枠は①毎月分配型②レバナスなど金融派生商品(デリバティブ)取引中心③信託期間が20年未満-は投資対象から除外されます。それでも、つみたてNISAよりも高手数料の投資信託が扱えます。成長投資枠で高手数料の投資信託を少しでも売りたい銀行や店舗型証券会社は「つみたてNISA上限600万円、成長投資枠上限1,200万円」という誤解さえも都合よく悪用した営業をしてくると思います。例えば「つみたてNISAは600万円までです。1,200万円分は成長投資枠でつみたてNISAとは違うアクティブ型投資信託で積極運用しましょう」なんていう営業をかける姿が目に浮かびます。事実、成長投資枠は少しでも手数料を稼ぎたい金融機関が必死にロビー活動をした執念のたまものです。ただ、山崎氏は成長投資枠で儲けたい金融機関のロビー活動の結果、生涯投資上限額が大きくなった面もあるとした上で「下品な資本主義もたまには役に立った(笑)」と山元節をさく裂させました。
【お勧め証券会社】
新NISAはインデックス型一本
山崎氏は新NISAの運用の考え方について「お金を効率的に増やしたいならば、つみたてNISAと成長投資枠の商品は同じでいい」と述べました。投資先の候補に、低コストの全世界株インデックス型投資信託が第一選択肢で最終候補とした上で「成長投資枠だからといって、何か違う特別なことをする必要はない。成長投資枠に騙されない」と強調しました。さらに、年金運用がアクティブ運用をしている理由は「アクティブ運用を一切しないと金融機関に構ってもらえず担当者が暇になるからしているようなもの」と明かし、個人が真似するような類のものではないとしました。小松原氏は資産配分(アセットアロケーション)だけでなく、NISA口座と一般口座にどの資産をどれだけ置くか(アセットロケーション)が大切と語りました。「収益率の高い株式をNISA口座に置き、債券や現金は課税口座に置くのが基本」と訴えました。成長投資枠で個別株を自分で組み合わせても信託報酬がかからず面白いと付け加えました。これに対し、山崎氏は①東証の購入単位(1単元)が高すぎる②多くの人にとって手間がかかるなどの理由を挙げて反論し、「運用が趣味や仕事がない人は低コストインデックス型の方がいい」と述べました。ただ、個人的には趣味としての個別株投資の運用商品組み合わせ(ポートフォリオ)づくりを伝えたいとも思っていると付け加えました。筆者個人はNISAはつみたてNISA、成長投資枠ともに時価総額加重平均型で低コストの全世界株(日本含む、日本除く両方OK)、全米株、S&P500、先進国株インデックス型投資信託に投資をすればだいたいいいと思います。付言すれば、基本かつ王道なのは全世界株(日本株)です。個別株はNISAではなく、趣味の範囲で特定口座など課税口座だけで考える話だという立場です。NISAの非課税枠を埋め、一定以上の資産を貯めてからでも全然遅くないです。もちろん、個別株投資を一切せず、全世界株インデックス型投資信託一本で何ら問題ありません。むしろ、基本に忠実な運用です。
【お勧め投資本】
山崎氏と投信ブロガー水瀬ケンイチ氏が共著の「ほったらかし投資術」です。日本人のインデックス投資の教科書かつ参考書と言ってもいい存在で、初心者から投資経験者まで幅広い読者層をカバーしています。インデックス投資を始め、続けていく力になる一冊です。
山崎先生、お大事に
軽快な「山元節」を見せていた山崎氏ですが、実は昨年食道癌(がん)になり、手術を受け療養していました。お元気そうだったものの、体はお痩せになっていたように見えました。山崎氏が病気と「持ち時間」を考え、記した記事を楽天証券コラムページ「トウシル」に掲載しました。概要は「病気と療養の概要」「情報・判断・処理の能力とコスト」「癌の費用と『がん保険』」「髪の毛や酒の『真の損得勘定』」「時間の最適化としての人生」です。山崎氏がつらい体をおしてしたためた魂の文章です。ぜひご覧ください。山崎氏の回復を心より願います。お大事にしてください。
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