こんにちは、でんです。筆者の文庫にある株式投資をはじめとする様々な本のミニ書評を不定期で紹介します。第3回目は「インデックス投資は勝者のゲーム」です。著者は米資産運用会社バンガード社を立ち上げ、インデックスファンドの父と知られているジョン・C・ボーグル氏です。「株式市場から利益を得る常識的方法」の副題通り、長期、分散、低コストを念頭に置いた株式投資のごく当たり前で基本的な考え方を様々な角度から紹介しています。「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス著)、「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール著)と並ぶ、インデックス投資の名著中の名著です。この中でも「インデックス投資は勝者のゲーム」は一番分かりやすく、読みやすい内容になっています。
市場全体を保有
「インデックス投資は勝者のゲーム」では、株式投資で成功する戦略とは、米国の上場企業の株式全てを極めて低いコストで保有することと記しています。そうすれば、配当や利益成長から得られるリターンのほぼ全てを獲得できるとしています。戦略を実行する方法として「市場全体のポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を有するファンドを取得し、永遠に持ち続けること」と強調しています。こうしたボーグル氏の戦略を忠実に具現化した上場投資信託(ETF)が全米株価指数に連動しているバンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)です。維持管理費(信託報酬)は年0.03%と極めて低コストです。VTIが日本国内で投資信託化されたのが楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)です。信託報酬が年0.162%ですが、十分な低コストです。さらに、為替コストや分配金再投資の効率はVTIを上回ります。
長期投資の力
著書では、1900年に株式に投じられた1ドルを116年間複利運用した結果、年平均9.5%上昇し4万3,650ドルにまで成長した事実を紹介しています。年平均インフレ率3.2%を除いた実質成長率で考えた場合でも年平均6.3%上昇し、1,339ドルです。実質成長率でも考えても1,300倍超に成長しています。配当利回りと利益成長率によるトータルリターンの結果で、複利の力をまざまざと見せつけられている気持ちになります。さらに付け加えれば、高値から時価総額が90%近く吹き飛んだ世界恐慌をはじめ、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショック、無数の弱気・調整相場、二度の世界大戦、核戦争危機などを乗り越えた上での結果です。
コストは大切
ファンドのコスト(信託報酬)こそが重要と指摘しています。著書によると、コストが低ければ低いほどリターンの点で優位になると説いています。25年間で最もコストの低い分類のファンドのリスク調整済年平均リターンは8.9%であったのに対し、最も高い分類のファンドのリスク調整済年平均リターンは7.4%だったとしています。年平均リターン差1.5%は長期運用すれば、累積差額は大きくなると指摘しています。25年間の複利リターンは最もコストの低いファンドが855%、最もコストの高いファンドが632%と、35%以上の差がついていると示しています。コストによる差です。低コストのファンドを選ぶことの大切さを訴えています。
※ただし、昨今の日本の積み立て型少額投資非課税制度(つみたてNISA)対象インデックスファンドにみられる信託報酬差年0.1%差程度ならば神経質になる必要はないと考えます。数十年では誤差程度の差しかつきません。
「インデックス投資は勝者のゲーム」
アクティブファンドの勝率2%
「インデックス投資は勝者のゲーム」は、アクティブファンドが長期運用になればなるほど、インデックスファンドに勝てなくなる点も指摘しています。アクティブファンドの勝率は運用期間10年で9%、50年でわずか2%です。アクティブファンドの高い経費率、ファンド内での売買コスト、税金が長期になればなるほど効いてくると述べています。他にも資産配分の考え方や長期投資を続けていく心構えなども記しています。市場が好調な時も、今のように不安定な時も、手元に置いて読み返したい一冊です。このブログに来ていただき、最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
コメント