こんにちは、11月最後の週末に国内大手のインターネット証券会社が交流サイト(SNS)でトレンド入りしていました。発信内容を見てみると、トレンド入りした証券会社が経営危機で倒産するかもしれないという内容でした。はっきり言って、具体的な情報源や根拠のない悪質なデマです。筆者自身もこの証券会社の直近の決算を確認しましたが、貸借対照表、損益計算書のどこをどうを見ても極めて正常な証券会社の決算内容で経営危機につながりそうな兆候は一切見い出せませんでした。トレンド入りの発端は下らないデマでブログの記事で取り上げるかどうか悩みましたが、日本証券業協会に加盟している日本の証券会社で投資している資産は仮に証券会社が破綻したとしても、原則として二重に保護される仕組みになっているのを確認するいい機会だと思いますので取り上げます。
分別管理で証券会社破綻時にも保護
証券会社は金融商品取引法に基づき、顧客の資産を証券会社自身の資産と分別管理する義務があります。例えば、証券会社に預けた上場株式や地方債、事業債は第三者機関の証券保管振替機構(ほふり)に預託し、証券会社が保有する資産と区別して管理されています。個人向け国債は「国債振替決済制度」に基づき日本銀行に預託して保管します。外国株式や外国債券、外貨建てMMFは顧客の持分を正確に管理した上で、国内や海外の保管機関で保管しています。いずれも顧客個別の資産は帳簿で直ちに判別できます。仮に株式や債券の預け先の証券会社が破綻したとしても、顧客の株式や債券は制度的に守られます。なお、預かり金も信託銀行に信託されています。
投資信託は三者いずれかが破綻しても大丈夫
投資信託の場合、証券会社に預けた投資信託は証券会社自身の資産と区別してほふりに記録されます。これに加え、投資信託は委託会社(運用会社)が商品を組成し、販売会社(証券会社)が販売します。運用会社の指図を受けて信託銀行が取引します。さらに信託銀行で資産を信託銀行自身と資産と分別管理しています。仮に運用会社や証券会社が破綻しても、資産は信託銀行にあるので保全されます。信託銀行が破綻しても信託銀行自身の資産と分別管理しているため、資産は守られます。投資信託は制度上、各機関が破綻しても、顧客の資産は守られる仕組みになっています。
二重のセーフティー投資者保護基金
仮に倒産した証券会社が法令に違反して分別管理義務を怠っていたなどの理由で、顧客への資産返還に支障が生じる場合、投資者保護基金により顧客1人当たり1,000万円を上限に補償を受けられます。投資者保護基金は国内で営業する証券会社は加入義務があります。つまり、証券会社で保有している国内外の上場株式と上場投資信託(ETF)、投資信託、個人向け国債は投資者保護基金の対象になります。なお、銀行で販売している投資信託や個人向け国債は投資者保護基金の対象にはなりません(上場株式やETFは銀行では扱えません)。もちろん、銀行にも証券会社同様に資産の分別管理義務はあります。
「ほったらかし投資術」(山崎元、水瀬ケンイチ共著)は日本人のインデックス投資の最良の教科書です。明確な理論や実際に投資した経験、つまづくポイント、教訓が一冊に詰まっています。
無担保貸株は分別義務なし
ただ、一つ注意が必要です。証券会社で無担保貸株をしていた上場株式やETFは証券会社に分別管理義務はありません。しかも、投資者保護基金対象から外れます。上記で記しているような有事での保護は一切受けられなくなり、資産が一部または全て戻ってこなくなってしまいます。確かに貸株は年0.1%~数%の貸株金利を受けることができます。しかし、資産の分別管理義務や投資者保護基金といった証券口座の資産を保全する法律に基づいた制度(無料の保険)を放棄して証券会社の信用リスク(破綻リスク)をもろに受け入れた対価として貸株を得られるという事実は忘れないほうがいいと思います。なお、筆者は以前はETFなどで貸株をしていましたが、今は貸株をしていません。利用している証券会社の破綻の可能性は極めて低い(現時点でないと読み替えて頂いて構いません)と判断していますが、資産を保全する無料の保険を放棄する気にはなれなくなったからです。
楽天証券は積み立て型少額投資非課税制度(つみたてNISA)対象で低コストかつ時価総額加重平均型の全世界株、全米株、S&P500、先進国株のインデックス型投資信託を多数扱っています。当然、日本証券業協会員(日本証券業協会に加盟)で、投資者保護基金にも加入しています。
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