2027年1月の個人型確定拠出年金（iDeCo）掛金枠の大幅拡大は、多くの人の自分年金づくりに大きな影響があります。そしてその8カ月前、2026年4月には企業型確定拠出年金（企業型DC）のマッチング拠出枠拡充が先行して始まります。どちらも同じくらい重要な制度拡充です。フィナンシャル・ウィズダム代表の山崎俊輔氏（1級DCプランナー）による楽天証券「トウシル」への寄稿は、この2つの制度変更の意味を極めてわかりやすく整理しており、多くの人に参考になる内容だと感じます。マッチング拠出は先に使えるメリットが強そうですが、勤務先の企業型DCの商品ラインナップ次第では注意も必要です。
増える選択肢
詳しい記事の内容は上のリンクをご参照ください。山崎氏の記事でも整理されているとおり、確定拠出年金制度の大前提として、
- 企業型DCと iDeCo は原則併用可能
- ただし「マッチング拠出」を選ぶと iDeCo とは併用不可
という仕組みがあります。
今回の改正の核心は次の2点と言えそうです。
- 2026年4月にマッチング拠出が先に拡大し、2027年1月に iDeCo が続くという時間差があること
- そのため、以前よりも「どちらを選ぶか」の重要性が高まること
2026年4月以降、マッチング拠出の算定式は次の通りです。
マッチング拠出の上限額
＝ 月5.5万円 −（確定給付企業年金がある場合の他制度掛金相当額＋企業型DCの会社掛金）
企業側の掛金が少ない人ほど、より大きな枠が開く構造になります。そしてこの拡大は iDeCo より8カ月早く適用されるため、条件に合う人にとっては明確なメリットとなります。
商品ラインナップに注意
山崎氏が整理しているポイントは非常にわかりやすいものです。
●マッチング拠出の強み
- 口座管理手数料ゼロ（多くの会社は追加負担なし）
- iDeCoより年間2,052円以上有利になるケースが多い
●マッチング拠出の弱み
- 商品ラインナップが古く、信託報酬が高いケースがある
- 低コスト全世界株式インデックスファンドが選べない企業もある
●iDeCoの強み
- 運用商品の自由度が圧倒的に高い
- ネット証券であれば低コスト全世界株式インデックスファンドを選びやすい
山崎氏は「環境によって結論が変わる」と述べていますが、私も同感です。
- マッチング拠出の商品コストが年1％以上など重い → iDeCo がおおむね有利
- 勤務先の企業型DCに低コスト全世界株式・先進国株式がある → マッチング拠出が有利
極めてシンプルな判断軸と言えます。
資産形成の王道は不変
- リスク資産：低コスト全世界株式インデックスファンド
- 無リスク資産：個人向け国債変動10年 または 普通預貯金（MRF含む）
この組み合わせは最も分かりやすく、非常に合理的だと考えています。
もちろん、リスク資産部分を低コスト先進国株式・全米株式・S&P500に置き換えても大きく外しません。そして、
マッチング拠出と iDeCo のどちらが最適かは人によって異なる
という点も忘れてはいけません。
一つだけ確実に言えることは、
勤務先の企業型DCに低コスト全世界株式や低コスト先進国株式インデックスファンドが採用されているならば、マッチング拠出を使う価値は非常に高い
ということです。
制度拡大はチャンスです。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合った選択をしていきたいところです。
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