セゾン投信は1日、創業者の中野晴啓会長が退任する人事を5月31日の取締役会で決めたと複数の新聞社、通信社の取材に明らかにしました。6月28日の株主総会で正式決定します。日経電子版や共同通信などが報じました。中野氏は「長期、積み立て、国際分散投資」を合言葉に、運用会社の垣根を超えて日本に国際分散型投資信託への長期積み立て投資を根付かせてきた余人には代えがたい功労者です。「積立王子」の愛称でも知られています。事実、中野氏が率いたセゾン投信は顧客に寄り添い、大手証券会社や銀行に属さない資産運用会社として顧客を開拓してきました。金融庁の有識者会議のメンバーも歴任し、同庁から厚い信頼を受けています。6月30日付で投資信託協会の次期副会長に内定していました。中野氏は日経の取材に対し「不本意な退任」としています。日本の投資信託界の大功労者が本人の望まない形で退任させられるのは凄く残念です。かつてコスト引き下げに一言物申した中野氏を恐れ多くも批判する記事を書きましたが、今の日本の投資信託の土壌を耕してきた功労者として尊敬してきました。筆者は保有していませんが、仮にセゾン投信の運用資産を保有していたら全額解約も考えたかもしれないぐらい憤りを感じています。
既存の受益者不在の決定では…
日経電子版該当記事
共同通信該当記事
日経電子版によると、中野氏退任の背景には経営方針を巡り、親会社のクレディセゾン側と対立していたといいます。共同通信によると、顧客本位で堅実な積み立てを目指す中野氏に対し、クレディセゾンの林野宏会長がセゾン投信の投資信託の販売拡大を主張して路線対立があったとされています。事実上の更迭とみられるとしています。クレディセゾン側は中野氏退任の事実は認めたものの、日経や共同の取材に対し一切のコメントをしていません。筆者はどうしても、既存の受益者(セゾン投信保有者)不在の決定としか思えません。中野氏は1987年にクレディセゾンに入社後、セゾングループ内に投資顧問事業を立ち上げました。2006年にセゾン投信を設立し、現在では運用資産残高6,000億円超で口座保有者は15万人を超えています。セゾン投信は非上場で、クレディセゾンが60%、日本郵便が40%株式を保有しています。確かに会社は株主のものと言えばその通りで、それまでなのかもしれません。しかし中野氏の「長期、積み立て、国際分散投資」を根付かせようとする姿勢に、セゾン投信の投資信託保有者のみならず、忖度(そんたく)ができない原理主義者だらけの(笑)投信ブロガーの支持も集めてきました。専門家や金融庁からの信頼も厚いです。後任のファンドマネジャーらは中野氏の理念や思いを引き継いでいくとしています。ただ、販路拡大を優先するあまり投資家をないがしろにすると、セゾン投信の保有者に決して少なくないとされている「中野ファン」「積立王子ファン」からセゾン投信が見捨てられる可能性もありうると思います。
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