こんにちは、全世界株価指数(日本含む)に連動する別次元の低コストインデックスファンドが誕生します。日興アセットマネジメント(AM)が26日に運用を開始するTracers MSCIオール・カントリー・インデックス(トレカン)です。EDINETで公開された有価証券届出書によると、運用管理費(信託報酬)は年0.05775%です。5月11日以降に適用されるeMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)の信託報酬年0.1133以内%を0.05555%下回ります。厳密には連動指数が異なりますが、同じ全世界株インデックスファンドである米国上場投資信託(ETF)のバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)の信託報酬年0.07%をも下回り、まさにコスト破壊といえる水準です。Tracersシリーズは超低コストかつニッチな投資信託を出してきた印象ですが、今回は基本かつ王道の主軸指数連動投資でオルカンと真っ向勝負を挑んできました。あまりもの驚きとともに、まずは日興AMの勇気と決断を称賛したいと思います。
正直言って、誤差レベル
有価証券届出書によると、トレカンはファンド内で米国ETFを購入するのではなく、オルカンなどと同様に個別の株式に直接投資をする形を取ります。連動する株価指数はMSCI ACWIです。先進国株(日本含む)が9割弱、新興国株が1割強で、国別比率では米国が6割を占めます。指数の対象は世界の大・中型株式約3,000銘柄で、世界の時価総額の85%程度を占めます。恐らくは分配金を出さずにファンド内で配当金を再投資し、配当課税を繰り延べる形で効率的な複利運用を可能にすると思います。運用開始と同時に積み立て型少額投資非課税制度(つみたてNISA)対象銘柄にほぼ確実になるとみられます。販売会社は現時点でSBI証券のみですが、今後増加する可能性があります。確かに信託報酬年0.05775%は強烈な安さです。しかし、オルカンも現行で年0.1144%以内、5月11日からは年0.1133%以内と極めて安いです。正直、信託報酬差年0.1%を切る差は誤差レベルだと思います。慌ててオルカンから乗り換える類の話ではありません。ましてや含み益の出ているオルカンを売って課税されてしまったら、乗り換えで信託報酬が減るであろう分を加味しても、一生かけても全然取り返せないレベルの負担増となってしまいます。
運用状況を確認してからでOK
投資信託はどんなに信託報酬が安くても、純資産総額が小さい内や運用初期は決算で初めて判明するトータルコストがかさむ傾向にあります。誤差レベルの信託報酬差は余裕で吹き飛んでお釣りがでるレベルです。さらに、オルカンとトレカンでは指数の標章使用料(ライセンスフィー)の算定方法も違います。オルカンは目論見書であらかじめ示される信託報酬にライセンスフィーは含まれます。一方でEDINETで公開された有価証券届出書によると、トレカンは信託報酬にライセンスフィーは含まれず、運用報告書で初めて判明するその他費用に計上されています。個人向け投資信託のライセンスフィーの相場は一般に年0.03%程度から年0.05%程度と言われていますが、実際はブラックボックスですので具体的な率は分かりません。落ち着いて何年か運用報告書で低コストであるのを確認し、安定して資金が流入し純資産総額が伸びているのを確認してからトレカンに投資しても遅くないと思います。あと、無理な信託報酬引き下げ合戦になって繰り上げ償還の可能性を高めるのは本末転倒です。長期的に安定した運用と低い信託報酬を両立できる水準で続けることが大切だと思います。繰り上げ償還は長期投資家にとって、最大の敵の一つです。
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